
南アフリカではエイズ感染が深刻な問題となっている
南アフリカ異民族研究所(SAIRR)はこのほど、南アフリカでのHIV(エイズウイルス)感染者の2人に1人が出産年齢の女性とする調査結果を発表した。南アフリカでは人口の1割に当たる558万人もの人々がHIVに感染し、うち53%の293万人は出産年齢とされる15-49歳の女性だった。地域別では東南の端にあるクワズール・ナタール州を筆頭に東部で多く、感染者が最も少なかったのは西端の西ケープ州となった。
出産年齢の女性にHIV感染者が多いのは同地域の深刻な貧困状況に加え、男女差別により女性の経済的自立が十分にサポートされていないことが背景とされる。貧しさから売春を行う女性が多く、お金がかかる健康チェックも行わないため知らないうちにお客にHIVを感染させる。感染したお客も知らずに妻にHIVを感染させ、結果として誰も知らないうちに生まれた子どもが感染してしまっているという悲劇が多発している。
国連合同エイズ計画(UNAIDS)によれば世界のHIV感染者数は09年の時点で3300万人。4000万人に及んでいた03―05年ごろと比べると規模は縮小してきているものの、これは亡くなる人が増えて状況が均衡してきているためで問題そのものが大きく改善したわけではない。
世界の感染者の68%は南アフリカを含めたサブサハラ(サハラ砂漠以南)地域に集中する。感染率ではスワジランドやボツワナが2割を超える最悪の状況だが南アフリカの1割も低くない。南アフリカは近年経済発展が著しいがHIV感染者数はほぼ横ばいで、差別に起因する格差が根深いことの証明ともいえる。SAIRRのレラート調査員は今回の発表に際し「人口は世界のたった0.7%だがHIV感染者では世界の17%をも占める」と、ことの深刻さを伝えた。
HIVは家族にとっては働き手を早くに失うことで生活の困窮状態を招くものであり、企業にとっても生産性の低下につながる。結果として経済基盤が脆弱化し、税収が減る半面で対策の保健サービスなどへの支出が増えるため、国の財政をも悪化させる。HIV対策は保健、医療の問題のみならず経済基盤を維持していく上で避けて通れない。
南アフリカは海外からの投資も呼び込んで成長してきているが、生活インフラの不備や治安状況など海外企業が駐在員を送り込んでビジネスを始める上での懸念材料は多く、この点でHIVがまん延する状況も進出を断念させる要因だ。日本企業でも進出するのは50数社に過ぎない。
こうした状況を鑑み、ズマ大統領は11年11月、「今後5年でHIV感染者と結核患者を半減させる国家計画」を打ち出して予防や検査体制の強化などに取り組む姿勢を示した。成長を続ける新興国としての評価を維持するためにも進展が期待される。